海外組織再編成について

ある会社の社長から「ヴァージン諸島の会社に10%出資しているのだが、この度このヴァージン諸島の会社がケイマン諸島の法人を親会社、ヴァージン諸島の会社を子会社とする株式交換をするのだが、株主として保有しているだけの我々に課税は生じるのか?」とのご質問頂きました。
論点としては、株式交換によりこのヴァージン諸島の法人を株式交換完全子法人、ケイマン諸島の法人を株式交換完全親法人とする再編をした場合に日本の株主に株式の譲渡損益課税は課されるのか?若しくは日本の税法上の税制適格株式交換みたいに課税は繰り延べられるのかという部分が論点になります。

そのため今回はこれを題材に海外組織再編成の概要ついて見ていきたいと思います。

わが国の現行税法上、外国法に準拠した外国法人の組織再編成に係る取扱いについての明確な規定は存しません。
また、同じく、わが国の会社法に規定する組織再編成等についても日本国内で内国法人に対して適用される規定であることから、外国法人はその適用の対象外となります。
しかしながら、法人税法の規定上、適格組織再編成等の定義においては内国法人と外国法人とに区別はなく、そこに会社法上の組織再編といった表現も用いられていないことから、外国法人に対しても内国法人の組織再編に係る規定が準用されるものと考えられます。
そのため、日本法上の組織再編と法務上の観点から類似した再編であり、かつ、日本税法における適格要件を充足している場合には、実務上、内国法人と同様に適格組織再編として課税の繰り延べが認められているものと考えます。
しかしながら、ここにいう「日本法と類似した組織再編」とは、一般的には、あくまでも同一国内の法人間での組織再編成を指すものであり、本件のような複数国間でのいわゆるクロスボーダー再編までは、日本法の概念と大きくかい離するものとして含まれないものする解釈が原則として採られていると考えます。

例えば、欧州においては国境を跨ぐクロスボーダーマージャー等が認められておりますが、日本の会社法ではこのような国境を跨ぐ合併は認められていないため、これを日本の合併に類似するものとすることは法解釈上からも困難であるとする取扱いが、実務上、一般的です。

結論として、上記設例における本件のヴァージン諸島の法人とケイマン諸島の法人の株式交換取引は、日本会社法に定める株式交換に類似する取引には該当しないものと考えます。

日本の会社法に定める株式交換に類似する取引には該当しないことを前提とすれば、本件における日本株主の取扱いに関しましては、株式の譲渡としてヴァージン諸島法人株式を対価としてケイマン諸島法人株式を取得したものと考えられます。
そのためヴァージン諸島法人株式の簿価とケイマン諸島法人株式の時価との差額が日本株主の課税所得を構成すると考えます。

以上が海外組織再編成における考え方になります。

海外絡みは潜在的に難しいと感じてしまいますが、要点さえ押さえてしまえばそこまで難しいものではありません。
是非ものにして、今後の経営に活かしてください。

また、私どもの方でご相談にのることも可能ですのでお悩み等御座いましたらお気軽にご連絡頂けますと幸いです。

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