海外子会社を有する場合の税務上の論点

近年グローバル化に伴い、海外子会社を有する法人も増えてきました。
そのため、今回は海外子会社を有する場合の税務上の論点について見ていきたいと思います。

1. 海外子会社の法人税
海外子会社と内国法人は別法人のため、海外子会社が海外の拠点で課されている外国法人税及び利益については、内国法人において特段影響しません。(外税控除の適用もない)

2. 利益還流
海外子会社が内国法人に利益を還流する場合、方法としては、配当、利子、マネジメントFee等が考えられます。

【外国源泉税】
一般的には、配当及び利子により利益還流をした場合、海外で源泉税が徴収されます。(租税条約を確認し、税率を確認。免税の場合有り。)
マネジメントFeeは基本的に、海外子会社が日本に恒久的施設(PE)を有していない場合、外国源泉税は課されません。
当該課された外国源泉税は、日本において外国税額控除の対象となります。

【内国法人の課税関係】
内国法人が受領した配当、利子、マネジメントFeeは基本的に、内国法人の課税所得の計算上、益金に算入されます。
ただし、配当に関しては、外国子会社配当益金不算入の規定(25%以上6月以上保有)の適用を受けることができる場合、配当金額の95%免税及び外国源泉税の損金不算入となります。
当該25%以上6月以上の要件は、租税条約により軽減されている国があるため、租税条約の確認が必要となります。(USA:10%、AU:10%、ブラジル10%、フランス:10%)

3. 移転価格税制
内国法人と外国子会社との間の取引は移転価格税制の対象となるため、取引金額は独立企業間価格で行う必要があり、文書化も必要です。

4. タックスヘイブン対策税制
海外子会社がタックスヘイブン国に設立されたペーパーカンパニーの場合、海外子会社で生じた利益は、内国法人の課税所得に合算されます。

【適用対象となる海外子会社】
内国法人又は日本人に50%超保有されている外国法人で以下の法人です。
① 外国法人の所在地国の税率が20%未満の法人で経済活動基準を満たさない法人
② 外国法人の所在地国の税率が30%未満の法人でペーパーカンパニー・事業上のキャッシュボックス・ブラックリスト国所在のもの

【適用除外】
次の要件をすべて満たす場合、ペーパーカンパニーに該当しないため、経済活動基準を満たし、原則タックスヘイブン対策税制は課されません。
① 事業基準(株式等の保有を目的とした会社ではないこと。)
② 実体基準(本店所在地国に、事務所等の固定施設を有すること。)
③ 管理支配基準(管理、支配、運営を自ら行っていること。)
④ 非関連者基準(事業を主として関連者以外と行っていること)0R所在地国基準(事業を主として所在地国で行っていること。)業種でどちらか選択
上記経済活動基準を満たす場合でも一定の受動的所得がある場合については、合算課税されます。

【外国税額控除】
合算された課税所得につき現地で外国税金が課されている場合は、外国税額控除の対象となります。

外国税額×課税対象金額÷適用対象金額

【配当】
特定外国子会社等からの配当は、全額益金不算入(合算所得を限度)となります。
配当源泉税は損金算入となります。

5. 海外子会社株式の譲渡課税(いわゆる事業譲渡類似株式のキャピタルゲイン)
内国法人が一定の外国法人の株式(25%以上保有)のうち5%以上を譲渡した場合、海外でキャピタルゲインに対して内国法人が外国税金を課されるケースがあります。(租税条約の内容により異なるため、国ごとに確認が必要)

以上が海外子会社を有する場合の税務上の取り扱いになります。
海外絡みは潜在的に難しいと感じてしまいますが、要点さえ押さえてしまえばそこまで難しいものではありません。
是非ものにして、今後の経営に活かしてください。

また、私どもの方でご相談にのることも可能ですのでお悩み等御座いましたらお気軽にご連絡頂けますと幸いです。

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